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2013年経済

少し遅くなってしまったが、今年の中長期展望を書きたいと思う。

2012年総括

2012年を一言で言えば、欧州が崖っぷちで踏みとどまった年といえる。前半は危機的状況にあったが、後半には危機回避システムの構築により信用が回復した。中国は国家主席の交代に伴い、更なる財政出動で危機を乗り切ろうとしている。米国も徐々に回復の兆しが見えて来た。昨年度の予測で、2〜3年のうちに円安になると書いたが、2012年後半に安倍首相の再登板によって円高の大反発が起きた。予想外の出来事であったが予定が1年ほど繰り上がったに過ぎない。予想外の円安は、日本経済にとって良い事に間違いは無い。

2013年予測

今年のポイントはなんといっても円安がどこまで進むかであると考える。世界経済は依然として弱い状況であるが、日本は円安を追い風にし、安倍政権の財政出動によって景気が上向くと予想されている。最大のリスク要因は、火種が依然としてくすぶる欧州問題である。根本的な問題は何も解決していない。第二のリスクは核開発問題に揺れる、イランと北朝鮮だと考える。特に、イランが戦争を始めれば、アジアの原油市場は高騰し、日本のエネルギー供給に痛烈な打撃を与え、経済に冷や水を浴びせるだろう。また、北朝鮮の核開発問題は日本に地政学的なリスクを与える。

海外中長期予測

欧州

欧州危機は何もまだ解決していない。ギリシャやスペインの長期金利が下がったとはいえ、借金が減った訳でもないし、雇用が回復している訳でもない。ユーロが値を戻しているのは、欧州諸国がユーロ安によって海外からの輸入を減らしているからである。個人消費は冷え込んでおり、当面回復する余地はないだろうと考えられる。従って、ユーロの価値が劇的に向上する事は考えにくい。

米国

米国はシェールガス革命によって全てが上向き始めている。先進国の中では突出して出生率が高く高齢化の問題も抱えていない米国は、製造業の国内回帰によって失業率の回復と共に国内需要の向上が見られていくと考えられる。製造コストは低く抑えられており、化学製品の原材料価格も低廉である。従って、中長期的にドルの価値は高くなっていく。オバマの二期目は非常に明るいと言える。

アジア

中国経済がソフトランディングできるのか、依然として不透明である。中国では大気汚染の問題が話題になっているが、同時に水質汚染も極めて深刻な状況だ。中国経済が8%の経済成長を続けていく事はもはや不可能だと思われる。共産党支配の中国では、公害問題を根本的に解決する方法が見当たらない。役人は汚職にまみれており、取り締まりも難しい。加えて、中国の労働人口が減少を始めている。超高齢化社会の入り口に入り始めてしまったわけである。先進国の仲間入りをする前に、衰退が始まると予測する。一方のASAN諸国は労働人口が極めて若く、有望である。まだまだ解決しなければならない問題は大きいものの、ASEAN諸国が一体となって経済圏を築く事により、大きな成長を見込む事ができるであろう。政治的、地政学的にも近しい日本は、ASEANの成長力を取り込む事が重要であり、脱中国が徐々に進むと予測する。まずは、ASEAN諸国の政治的安定を望みたい。そうすれば、来るチャイナショックをASEANが吸収する事になろう。

国内中長期予測

前述の通り、今年の景気予想は非常に明るい。世界経済に大きなリスク因子が現れない限り、日経平均で一万四千円〜五千円を目指すのではないかと考えている。しかし、中期的な展望となると雲行きが怪しい。それは多くの識者が指摘する日本の国家債務問題である。

2013年に突如債務問題が噴火するとは考えていない。何がトリガーになるかと言えば、日本の長期金利である。現在、足下では依然として超低金利状態が続いている。これが、1.5%を超えて来た時にそろそろまずいぞという事になるのではないかと思う。1.5%であっても低金利状態に代わりは無い訳だが、国債をたくさん買っている連中にしてみれば債券価格の下落によって資産価値が大きく目減りする事になる。そして、2%を越えてしまうともはや危ない状況が目の前にやってくる事になる。イタリアやスペインの例を考えると、長期金利が5%を超えてしまう事態すら想定しておかなければならないだろう。そうすると、円の価値は大暴落を起こす。ユーロ危機での下落を参考にすると、ドル円で200円〜300円といった事態が想定し得る。

ただ、私が楽観的に考えるのは、日本はギリシャほど深刻な状況にはならないだろうという事である。何故ならば、日本には付加価値の高い製品が溢れており、世界から外貨を獲得する手段をたくさん持っているからである。また、海外資産もたくさん持っており、行き過ぎた円安はいずれ国内への資金移動に繋がる。そこで、仮に通貨の価値が3倍(1ドル270円)に希釈されたら日本経済はどうなるかを考えてみたいと思う。

通貨の価値が3分の1になるという事は、輸入コストが3倍になるという事である。まず、原材料価格が大幅に上がる。電気代があがり、インフラコストが自動的にあがる。それでは、日本の製造業は終わってしまうかといえば、そうでもない。日本の良質な最終製品を格安で世界に向けて輸出できるため、日本の輸出企業はそうしたインフラコストをすぐに吸収してしまう。また、海外に生産機能を持っている企業であれば、海外から外貨が流れ込んでくるため持ちこたえる事ができる。給料も柔軟に物価水準へと合わせる事ができるはずだ。

深刻だろうと思える食料はどうだろうか?日本のエネルギー自給率は40%という事なので、輸入食料が高騰してしまい日本人は食べる事ができなくなってしまうだろうか?それも可能性としては小さい。日本には主食である米が余っている事、野菜の自給率は高い事、輸入食料には現在は高関税がかけられている事等を考えれば、すぐに食料コストは吸収できてしまうだろうと考えられる。むしろ、日本の農業競争力が強くなり、休耕田をもう一度耕し始める事で、現在の閉塞した農業政策を変えていく好機になるかもしれない。日本のエネルギー自給率を下げる最大の原因となっている家畜飼料の輸入であるが、例えば和牛を育てるのに家畜飼料が高騰して大変とも思えるが、それと同時に外国の牛肉の輸入コストが値上がりする事から、逆に国内での価格競争力は向上するかもしれない。高い肉を食べる人が減るかもしれないが、それは輸入分が減るだけの事である。

しかし良い事尽くめであるわけではない。企業で危ないのは、銀行や保険といった金融関係の会社である。日本国債が暴落すれば、国債を買い支えている銀行や保険会社の自己資本が一気に蒸発してしまう。銀行や保険会社が潰れれば、当然そこにお金を預けている企業や人が大きな損を被る事になる。またサービス業や外食産業は壊滅的な打撃を被るだろう。例えば、衣服などの消耗品は大切に使うようになるだろうし、コンビニなんかも行かなくなるかもしれない。外食は極力避けるだろう。誰も旅行にもいかなくなる。広告料収入の減少により、あらゆるサービスが縮小する。結果として、リストラが横行して失業者が一気に増えるかもしれない。またそうした企業は賃金水準をあげる事ができないため、極めて厳しい状況に陥る。

個人で危ないのは、そのように世の中の景気に大きく左右される職業の人々である。人間が行きていく上で必須である会社は景気の左右を受けない。また、リーマンショックでは製造業の派遣切りが問題になったが、今度はサービス業の派遣切りが問題になろう。また変動金利のローンをしている人はさらに危険である。金利があっという間に5%を超えてしまうと、月々の支払いができなくなり、持ち家を放棄しなければならない。インフレーションが起きてしまうと、不動産価格も上昇始めるので、当然ながら賃貸物件の家賃も高騰する。住む家もなくし、自己破産をする人が急増する。

ひとたびインフレーションを起こすと、全ての価値が上昇する。不動産価格が上昇し、株価も全体としては上昇する。従って、金融資産を持っている人にとってみれば、インフレーションは一時の我慢である。しかし、金融資産を持っておらず現金しか手元に無い場合、給料が物価水準にあがるまでの間に、資産を根こそぎ持っていかれる事になる。日本は対外純債権国であり、国外資産が豊富である。従って、ある程度の円安になると海外資産が日本に戻ってくる事になる。例えば、日本は国全体として米国債を膨大に保有している(国が100兆円、民間では500兆円以上あるとも言われる)。従って、もし日本円が暴落して価値が3分の1になったとすれば、日本の借金1000兆円はチャラになっておつりがくる計算になる。そう考えると、そこまで円が暴落するというのは現実的な考えではないだろうと思うのである。

さて、そんな円大暴落に備えて今すべき事は何であろうか?端的に言えば、外貨の確保である。特にドルの確保であろう。ドルは米国のシェールガス革命によりどのみち高くなるわけであるから買っておいて損は無い。株を買うにしても、北米株やASEAN株に注目したい。一方で、国内資産で最も危険なのは現金である。インフレが起こった時の現金の劣化は激しい。さらに危険なのは、銀行への預金、生保の保険料等である。比較的安全なのは、国内の輸出企業、インフラ企業、物流企業の株である。不動産や貴金属の現物も安全である。一方の危険なのは、金融関係、サービス関連、輸入企業の株である。例えば、銀行、証券会社、商社などである。普通に考えて、ワインの輸入業者などは潰れてしまうだろう。インフレが起こっているのに、誰が海外のワインをわざわざ買って飲もうと考えるだろうか?

数年過ぎれば、日本の輸出超過と、海外資産の回帰によって日本は復活を遂げる事になる。そこまで食いつなぐべきリスクヘッジをしておく事が、個人に今出来る事である。賃貸暮らしで持ち家をそろそろ買おうかなと思っている人は、金利が安いうちに固定金利で不動産を買う事をお勧めする。安倍総理の再登板により、金融経済政策に大きな動きが見られる。日本の景気が回復するとともに、早晩2%のインフレターゲットをクリアする事になるだろう。そうすると、2〜3年のうちに長期金利がジワリジワリと上がってくる事になろう。

投資環境

上述した通り、投資環境は整っている。日本のインフレリスクは30%程度と見積もっている。ただ、本当にインフレになってしまった時のダメージは計り知れないものがあるので、資産の半分以上を外貨若しくは外貨建てで持っていたい考える。現金資産はなるべく減らし、残りは値上がりの期待できる日本株に投資したい。日本株に投資する際には、インフレリスクの小さい株、又はインデックス型、製造業型の投資信託に投資したい。

外貨建て投資の中心は、北米株、アジアASEAN株、中東株であり、投資期間を10年〜30年の長期に設定する事が可能と考える。一方、中期的には債券投資や、REITも面白いと思われる。ただし、日本経済がパニックを起こした時には、アジア経済に飛び火するのは目に見えている。従って、日本経済にいくつかのサインが出始めた時には要注意である。

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