2012年からの10年間

2011年総括

2008年リーマンショックから派生した欧州危機が、今年顕在化した。欧州域内の経済圏拡大に伴うドイツ経済の活況に対し、ギリシャを筆頭とする債務超過国のバランスシート上の歪みに、債権市場が耐え切れなくなった。先進国銀行は、見かけの信用力があったユーロ建て債権を債務超過国から買い続けた。結果として、ギリシャ等の産業基盤の弱い国々は政府財政が借金漬けにされてしまった。ドイツの経済活況は、これらの国々の借金によってもたらされたものであり、ドイツは欧州全体としてこの問題を解決しなければならない責務がある。しかしながら、ドイツの国民感情の整理には時間がかかること、EUの構造的欠陥(経済政策の非統一性)の大規模修繕が難しいことから、危機は簡単に収束することはできず、むしろ今後加速するかもしれない状況にある。

 

2012年予測

世界経済はさらに落ち込むと予想される。ポイントは、以下三点である。第一点は、欧州危機の収束に向けた取り組みがどこまで実行されていくのかということ。第二点は、中国経済の失速とバブル崩壊をどのように織り込んでいくかということ。第三点は、北米経済がどこまで回復できるのかということ。総合して考えると、第一点目の欧州危機の収束に目途が立たなければどうにもならず、その他の問題点が顕在化した場合、資産のリスク化はさらに高まっていく。

 

海外中長期予測

欧州

欧州危機が収束できたとしても、その傷跡は深い。経済状況が5年で上向きになるとは到底考えられない。EUの構造的欠陥をどのように修繕していくのか、それともEUは解散するのか?迫られるだろう。従って、ユーロ通貨は向こう5年間弱い状態が続く。現在の債券市場の金利水準は非常に高く、この金利水準が下がってくれば、欧州市場の再投資を考えるべきであるが、欧州市場に活気が戻るには時間がかかると予測する。しかし、アジア経済、アフリカ経済の活況如何によっては、ジワリと回復基調にのるかもしれない。

北米

アメリカ経済は力を取り戻しつつあるものの、雇用の回復が遅々として進まないだろう。アメリカは戦争をしないと続かない国であるため、イランや北朝鮮という国々とどう向き合っていくか注目である。向こう5年間、アメリカ経済は回復方向にはあるものの力強く回復できるものではないと予測する。

アジア

中国経済がソフトランディングできるのか、できないのかということが最大の焦点であると思うが、今のアジアというのは、中国やインドだけがアジアではないのが懐の深いところである。ベトナム、インドネシア、フィリピンのVIP参加3国に加え、マレーシアやタイの高成長も期待できる。また、カンボジアやバングラディッシュといった国にも産業が興っていくだろう。欧州、北米の低成長を尻目に、アジアが向こう10年を引っ張っていくと考える。

 

国内中長期予測

向こう2~3年のうちに、今の円高は反転するであろう。欧州危機が去ってしまえば、世界が円を保持しておく理由はどこにもない。金融政策上、国の借金の多い日本の政策金利をあげようというモチベーションはなく、自然と円安方向に向かう。これと同時に、長期金利が上昇すると考える。日本の負債総額は歴史上ない額になっており、日本のクレジット低下は火を見るより明らかである。長期金利が上昇すると、個人の住宅ローン債務が膨れ上がり、企業の設備投資が減り、景気の再減速が始まる。こうなってくると消費税増税という話をしていられなくなるかもしれない。日本の景気が回復できるかどうかは、いつ円高が反転するかということにかかってくると思われる。数年前の1ドル120円に戻ることがあれば、日本の輸出産業は一気に営業利益を伸ばすことになり、多少の長期金利の上昇は問題なくなるだろう。日本の長期金利の上昇は財政再建への世界からの圧力となり、政府はバランスシートを適正化するため、歳出削減、歳入増加を本質的に考える状況に追い込まれるだろう。総合的に考えると、浮き沈みの激しい厳しい経済環境が待ち受けていると考える。とはいっても、10年もたって荒治療による構造改革が進むことで、日本の再浮上のきっかけが出来上がると考える。10年以内に日経平均で2万円をチャレンジする局面が出てくるだろうと予測する。

 

投資予測

直近の投資環境を考えると、株式運用については、アジア圏、国内を中心とした投資に注力すべきである。特に日本の株安は異常ともいえるほどの安値であり、10年程度を目安にした国内投資はしておくべきだと考える。一方、アジアの状況については、中国経済の動向に注目する必要がある。しかし、中国経済が失速したとしても、アジア全体の経済成長は止まることはないため、新興国市場への投資を継続することが大切である。為替については、円安のリスクヘッジを考えておくべきである。日本国債が暴落するというシナリオを完全に否定することは残念ながらできない。そのための外貨確保を十分にしておくべきだ。ドル、クロス円(ユーロを除く)、特に資源国通貨であるオーストラリアドルなどの需要は高いと考える。しかしながら、例え長期金利が上昇し、日本国債の売られるようなことがあったとしても、そのまま日本が沈んでしまうとは考えられない。個人、法人共に海外金融資産が厚く存在していること、また、単一国家におけるGDP500兆円の市場は強力であり、かつ、上流から下流へと分厚い輸出企業を数多く抱えているため外貨を稼ぐことは容易である。そうした認識の元、適切なリスクヘッジをしておくと良いと考える。

 

国内の政治環境

日本が浮上するためには、日本の構造改革が必要である。第一に必要なことは、病院の株式会社化、学校の株式会社化、農業・漁業の株式会社化を許可するといった、多くの規制の撤廃である。民間でできることは民間でやるべきである。最後のセーフティーネットとして国立の病院があって、それを行政がコントロールするのは問題ない。学業についても、これだけ学習塾が広がる中、民間企業が学問を教えられないことはない。高度経済成長期には、国の方向性を作るために優秀な官僚組織を必要としたが、成熟国家となった今の日本では、民間が自力でサービスを作り出すほうが簡単であり、世の中の需要に直接答えることができるのである。また、農業・漁業の株式会社化は地方の過疎化を救い、地方の活性に寄与する事だと考える。新しいサービスや価値の創出のためには、日本の規制の多さが問題となる。東北に復興特区を作るときには、あらゆる規制を廃することに挑戦すべきである。第二に必要なことは、社会保障改革である。社会保障費が多いのは、高齢者が病院にかかるからである。今の日本では、病院に高齢者が溢れ、無駄に病院を利用し薬漬けになっている光景を目の当たりにする。医者は高齢者の相談所ではない。数少ない医者を有効に活用するためにも、混合診療の解禁等やるべきことがたくさんある。優秀な医者でも、やぶな医者でも、診療ポイントが同じではサービスの質の向上は図られないだろう。病院の第一義的役割は、所得を生む人々の健康管理であり、所得を生まない人々の健康維持ではない。世の中が潤い、高額の社会保障費を賄え、医者がたくさんいるのであれば良いが、世の中の構造はそうなっていない。若い労働世代の所得を圧迫してまで、所得を生まない人々にお金をばら撒き続けていれば、全てが崩壊していく。第三に必要なことは、年金改革である。日本の労働人口は年々減り続けているのに対し、年金給付額は年々増え続けている。これは矛盾である。年金とは働けない高齢者のセーフティーネットであり、働ける高齢者であったり、社会保障を必要としない資産保有者に年金給付をする必要はない。働ける高齢者は働いて所得を生んでもらう必要があり、その意味で定年制度の完全撤廃が必要である。定年=年金支払い時という概念の取り壊しが必要である。また、資産保有者には年金給付を減額しまたは停止すべきである。近く日本の危機的状況が深刻化し、こうした改革が10年間で必要不可欠になるだろうと考える。

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インフレだとかデフレだとか

年が明けると、専門家たちの市場予想が始まっている。日経平均で2万円にのせたとしても、現状を考えると割高感がないだとかと景気の良い事を言っている。マスコミもこぞって、今年は“いい!”という事をアピールする。踊り場脱却で、しばらくこの流れが続きそうだと…。のどもとすぎればなんとやら。なんとお目でたな事であろうかと思ってしまう。日銀は、量的緩和を解除して金融を引き締めしようというのだが、これは今の経済学上は正しい事で、デフレ脱却をした状態で0金利を続けていれば、実質金利がマイナスになってしまうのだからこの怪奇現象をほってはおけない。

「マネーを生み出す怪物」をようやく読み終えた。かなりの大著であって、読み応えがある。特に最後のFRB解体、不換紙幣解体のシナリオは面白いなぁと思った。ちょっと考えてみるものの、素人的にはスルーしたくなるようなお題目であるわけで、時系列順に並べてもらうと、突っ込みどころはあるものの、あぁなるほど想像ができてくるというものである。

マネーを生みだす怪物 ―連邦準備制度という壮大な詐欺システム Book マネーを生みだす怪物 ―連邦準備制度という壮大な詐欺システム

著者:エドワード・グリフィン
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今のマネーサプライ経済というのは、結局中央銀行のふんどしの上で我々が踊っているに過ぎない。もっと言えば、世界の一握りの権力者によって、マネーという絵空事をぶらさげられ、ホリエモンのような役者を時々演出させては、夢を見させられている。何がいいたいかというと、マネーサプライを増やせばインフレになるし、減らせばデフレになる。それの調節が、バブル崩壊と次なるバブルである。歴史をみればこれを単調に繰り返しているに過ぎない。金融家はバブルが崩壊したときにこぞって投資を行い、バブルが崩壊する前にそれを売りさばくのである。

2006年の景況感はますます調子が良いと聞くと、デイトレーダーらの個人投資家はこぞって、小泉改革万歳、竹中プランは素晴らしいと褒めちぎるわけだが、何の事はなく、あれだけの公的資金を注入し、国債を数百兆も増やせば、マネーサプライは増大し、インフレ傾向に日本経済が傾いただけは無いのかと指摘したくなる。さらに言えば、原油高のおかげで物価も高くなるし、オイルマネーが東京市場にも押し寄せている事もあろう。

本の紹介を少し続けるが、著者は作家だけあって、中身は読んでいて面白い話が多い。よくぞこれだけの資料を集めたものだと驚嘆する。目新しい話があるのかといえばそうでもないのだが、著者のFRB憎しが面白く伝わってくるところがこの本の価値である気がする(笑)。話は不換紙幣という幻を解体し、真の貨幣を創設しようという件にうつるのだが、絵空事半分、本気半分という感じ。このように通貨が生まれ変われば、バカがバカを見ずにすむ世の中がやってくるのだろうなぁと感じる。だが、現状は無理である(笑)。

政府は一生懸命にプライマリーバランスを整えようと必至のアピールを示しているが、国家債務なんてものはなくならない。というよりも、なくしてはいけないのである。「国債800兆?まだまだ平気っしょ!」とかいう感じだろう。「だって、みんな国民のお金だもん!」この国家債務ほど、市中銀行家が手放しで喜ぶものはなく、国家債務が減ればマネーが縮小する。だから国家債務の本丸である財投債改革なんてものはやらないのである。郵貯を解体して、郵貯資金が米国債を買うのに使われれば、今度は市中銀行が日本国債を買うわけである。めでたしめでたし。そんな戯言があぁそうかとわかる風な本書でもある。

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